俳優・内藤剛志さんにとっての
全視界メガネとは?(前編)

Q. 内藤さんは今年で俳優業何年目ですか?
1980年デビューですから、もう35年。
実は、芝居を長くやってきて、最近ふと思うことがあります。
それは、芝居をしている時きにかけることが、
少しずつ変わってきているということ。
たとえば若いころ、20代は刑事ドラマが多かったので、
アクションと台詞のバランスに四苦八苦。
今思うと、無我夢中で駆け抜けた時代でしたね。

30代は、大河ドラマや、サスペンスドラマ、
もちろん映画や舞台など、幅広く挑戦していました。
俳優として、本格的にキャリアを積んだのもこの頃。
たくさん演じていましたので、
まさに演じることの本質を勉強した時代でもあります。

その後40代になり、
円熟味をさらに求められる今の50代となるわけですが、
今改めて芝居で気にかけていることは?
などと聞かれると、
実はその数が多すぎて切り出すことができなくなってしまいます。

プロとは、完璧な技術者ですから、
プロとして演じる以上、その技術は無数に存在しています。
ですから気にかけるところ、無意識にやっているところが、
私の中には無数にあるわけですね。
ですが、大切なことを敢えてひとつ挙げると、
それは『自然』ということになるのかなと思います。

『自然でいること』と『演じること』は
矛盾しませんか?

そうです。演じることと、自然でいることは、
ある意味矛盾していて、ここには満点がない。
でも、それを毎回飽きることなく追求するのがプロだと思いますし、
矛盾しているこの課題に、ひとつの解答をしめすのもプロの仕事。
つまり、答えがないのに、答えを出す。
ここが今の私にとっては、最大のモチベーションであって、
そういう気持ちから、演技のディテールが生まれてくるわけです。
Q. 演技で気にかけている『自然』とは?
私が大切にしているのは、自然な視線です。
人は誰かに会うと、まず目を見ます。
動物として相手を見定める…そんな行為だと思うのですが、
それはテレビやスクリーンでも同じ。
たとえばそこに俳優が写っていたら、
お客さんは瞬間的に俳優の目を見る。
そしてこの俳優が嘘をついているのか、
本当にそう思っているのか、一瞬で見抜いてしまう。
芝居において視線が大事だなと思うのは、
こんなふうに、お客さんが必ずみて、
なおかつ見抜いてしまうところだからです。

Q. 『自然』な視線を生み出すために、
意識して選ぶデザインがあると聞きましたが?
フレームデザインはとても意識して選んでいます。
芝居している時の自然な視線は、相手との自然な関係性から
生まれてくるのだと思います。
線の太い、強いフレームデザインは、
相手に壁を作っているようで、私の好みではありません。
ですから私は、気持ち的に相手との壁が取り払える
、 細いフレームデザインを好んで選びます。
メガネのデザインは、そうやって人の気持に影響してくるので、
特に仕事で使うメガネは、慎重にデザインを吟味します。

Q. 内藤さんのプロ意識は、メガネ選びに影響しますか?
ええ、とても大きく影響します。
演じている時に、その視線が自然かどうかは、
役者の実力を計るポイントだと、私は思っています。
ですから、仕事で着用するメガネは、
人一倍気を使って選びます。
Q. 全視界メガネとの出会いは?
私は40代後半からメガネを必要としました。
遠近両用メガネは、どうしても視線が
不自然*1 になるイメージがあります。
それで一時期は、遠視用メガネ、近視用メガネを使い分けていました。
しかしシーンごとにいちいちメガネを架け替えるのは、
集中力が途切れるため、これも受け入れ難いものでした。
そんな時に出会ったのが、全視界メガネです。
Q. 全視界メガネと、
内藤さんのプロ意識との接点は?
全視界メガネには特有の機能*2 があって、
瞳とレンズの位置関係がちょうどいい。
この位置関係が少しでもズレてしまったら、
見えにくいという視線や表情が生まれてしまうと思いますし、
時には見やすくするため、瞬間的に
覗きこむような不自然な姿勢*3 をとってしまうかも知れません。

その一瞬の、瞳や身体が反射的に行ってしまう動作が、
役者にとっては致命的なミスになるわけです。
誰にも疑われない、自然な視線で演じたいという私のプロ意識。
それに全視界メガネは、瞳とレンズの位置関係で応えてくれます。
だから、私は、プロの役者として、全視界メガネを選んでいます。

* 1 遠近両用メガネは、近くを見るレンズがレンズ下部に位置するため、近くを見る時視線を下に落とす傾向があります。

* 2 全視界メガネは、フレームが上下に動き、近くを見るレンズと遠くを見るレンズそれぞれが、瞳の前の見やすい適度な位置で固定されます。

* 3 瞳とレンズの位置関係がズレると、たとえば近くを見る時に、あごを突き出して視線を落とすような仕草が生まれてしまいます。

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